マイク・ガスコイン

マイク・ガスコイン

Mike Gascoyne
生誕 (1963-04-02) 1963年4月2日(61歳)
イギリスの旗 イギリス
ノーフォークノリッジ
国籍 イギリスの旗 イギリス
業績
専門分野 空力エンジニア
フォーミュラカーデザイナー
雇用者 マクラーレン(1989)
ティレル(1990,1993 - 1997)
ザウバー(1991 - 1993)
ジョーダン(1998 - 2000)
ベネトン/ルノー(2001 - 2003)
トヨタ(2003 - 2006)
スパイカー/フォース・インディア(2007 - 2008)
ロータス/ケータハム(2010 - 2012)
設計 ジョーダン・199
トヨタ・TF105

マイケル・"マイク"・ガスコインMichael "Mike" Gascoyne, 1963年4月2日 - )は、イギリスノーフォークノリッジ[1]出身の空力エンジニアで、F1カーのデザイナーとして知られる。

マクラーレンザウバーティレルなどのF1チームをエンジニアとして渡り歩いた後、ジョーダンルノートヨタフォース・インディアで技術部門の責任者を務めた。2010年よりロータス・レーシング(現:ケータハムF1チーム)に所属し、ケーターハム・グループの最高技術責任者(CTO) を務めた。

経歴

初期の経歴

1982年、19歳でケンブリッジ大学チャーチル・カレッジ)に入学し、流体力学を研究。1988年、25歳で中退し、ウェストランド・ヘリコプター社の一部門であるウェストランド・システム社で一時的に働いたが、モータースポーツでの仕事に憧れ、1989年の初めにテディントン(英語版)国立物理研究所にあったマクラーレンスティーブ・ニコルズのデザインチームに加わり[1]、風洞実験の空力エンジニアとして働いた。

1年間でマクラーレンを去ると、1990年にはティレルに加入し、ハイノーズ、アンヘドラル・ウイングを採用した斬新な空力処理を持つ019の開発(車体制御)に携わり、同シャシーの設計者であるハーベイ・ポスルスウェイトのアシスタントとして、その薫陶を受けるようになる。

1991年にポスルスウェイトが当時F1参戦を計画していたザウバーチームのF1カー設計に関わることとなったため、ガスコインもポスルスウェイトに従ってザウバーに移籍した。ほどなくポスルスウェイトはザウバーチームから去ったが、空力チーフだったガスコインは留まり、1993年シーズンを通してC12の開発を継続。同チームは初年度ながら12ポイントを獲得し、年間のコンストラクターズランキングでも7位を獲得するという、新規参戦チームとしては目覚しい成績を残した。

1993年後半、ティレルに復帰したポスルスウェイトから副テクニカルディレクター(テクニカルディレクター補佐)の座を提示されたため、ガスコインは翌1994年から4年間をティレルで過ごすこととなる。かつての名門とはいえ、この時期すでに斜陽となっており資金力に乏しい同チームでは開発者としては腕を振るう機会が制限されたが、1997年には「Xウィング」と呼ばれる特殊な小型ウィングを発案し話題を集めた。

1998年のシーズン直前、ケン・ティレルが同チームをB・A・Rに売却することを決意し、新オーナーがチームの技術部門の刷新を図ったため、ガスコインはチームを去った。

ジョーダン

1998年6月、テクニカルディレクターとしてジョーダン・グランプリに加入し、すぐさま1999年にむけて199のデザインに取り掛かった。この1999年シーズンはジョーダンチームにとってはチーム史上最も輝かしい年となり、コンストラクターズランキング3位、優勝2回という成績を残した。

翌2000年の結果は前年に比べれば冴えないものであったが、それでもガスコインの評価は揺るがず、エンジニアの中でも当時の二大巨頭であるエイドリアン・ニューウェイロリー・バーンに次ぐ存在とみなされるようになった。

ベネトン / ルノー

2001年シーズンの開幕直前、ガスコインは当時低迷していたベネトンチームへと移籍した。ほぼ同時期にチームはルノーによって買収され、翌2002年からルノーF1チームとして参戦することになった。

ルノーでは開発部門の総責任者として組織変更に着手し、ジョーダン時代からの知己であるマーク・スミスと、ティレル時代ともにポスルスウェイトの下で働いたティム・デンシャムを同格のチーフデザイナーに据え、2つの設計部門に隔年で設計を行わせるという独特の手法を試みた。

在籍3年目となる2003年のハンガリーGPで同チームとしては1997年ドイツGP以来となる久々の優勝を遂げた(ドライバーはフェルナンド・アロンソ)。しかしながら、ガスコインは年俸交渉でチームとの関係がこじれ、厚遇を示したトヨタへの移籍を発表した。

トヨタ

2005年型トヨタ・TF105

2003年12月、ガスコインはトヨタの本拠地であるケルンTMGファクトリーに職場を移し、テクニカルディレクターとして2004年型車両の開発に携わった。しかしながら、本来数ヶ月を要するF1カーの開発をシーズン直前のわずかな期間で行うのはそもそも無理があったため、2004年シーズンの結果は芳しくないものとなった。

当時、トヨタはフェラーリに匹敵あるいは凌駕するといわれるほどの潤沢な資金を持つチームであり、続く2005年シーズンはガスコインがそうしたリソースを効果的に活かしたことで、同チームにとってはそれまでで最も良いシーズンとなり、優勝こそなかったものの表彰台に複数回登壇し年間ランキングでも同チームとしては最高位となる4位を獲得した。

この結果から2006年はさらなる飛躍が期待されたが、マレーシアGPではガスコインのサーキット入りが遅れた事から、ガスコイン不在の中で金曜フリー走行が行われ、そのセッションのプログラムの中で、これまでガスコインが主導して設計した空力パッケージが全く効果を成さなかった事が発覚した。その後、サーキット入りしたガスコインは激怒し、ガスコインとチーム首脳部の対立が表面化、オーストラリアGP後に解任が決定した[2]。シーズン開幕前から新車TF106のパフォーマンス不足が判明し、改良型のTF106Bを投入する矢先の出来事だった。

なお、2005年の時点でトヨタから受け取っていた年俸は800万ドルと言われており[3]、これは当時フェラーリに所属したロス・ブラウンロリー・バーンマクラーレンに所属したエイドリアン・ニューウェイらを抑え、F1チームに所属するエンジニアの中では最高額となる報酬であった。

スパイカー / フォース・インディア

2006年9月、スパイカー・カーズ社がMF1レーシングの買収を発表。ガスコインはスパイカーF1チームと契約を結び、2007年に技術部門の責任者であるチーフテクニカルオフィサー(CTO)として同チームに加入した。なお、スパイカーチームの前身であるMF1レーシングは、ガスコインにとっては古巣にあたるジョーダンチームを買収して誕生したチームであった。

2007年10月にスパイカーF1がビジェイ・マリヤミッシェル・モルによって買収され「フォース・インディア」とチームを改名。ガスコインは同チームのチーフテクニカルオフィサーとして務めていたが、マネージメントの一新により2008年11月8日にチーム離脱が発表された。

その後はMGIリミテッドを設立し、技術コンサルタント業務を行った。

ロータス / ケータハム

2009年、MGIはイギリスのF3チーム・ライトスピードと提携し、ロータスF1チームとしてF1に参入するプロジェクトを進めた。2010年より参戦したロータス・レーシングでは、ガスコインがチーフテクニカルオフィサーに就任した。同年9月、チーム代表のトニー・フェルナンデスはガスコインとの契約を2015年までの5年間に延長する事で合意したことを発表した [4]。チームの運営面では、マーク・スミス(元フォース・インディア)のほかスティーブ・ニールセン[5](元ルノー)、ジョン・アイリー[6](元マクラーレン)といったかつての同僚を招き、技術部門の強化を進めた。

その後チーム名は、グループ・ロータスとの対立の末、2012年よりケータハムF1チームと名称変更することになった。ガスコインはF1、GP2、エンジニアリング部門など含むケータハム・グループ全体の技術面を統括するCTOに昇進した[7]

独立

その後ケータハムを離れ、自らCEOを務める「Mike Gascoyne International」を設立してコンサルタントに転身。

2017年には、元ミナルディのオーナーだったポール・ストッダートや、新たにF1の運営を引き継いだリバティメディアなどからの誘いを受け、ストッダートが運営する「F1 Experiences」が走らせる2シーターマシンのテクニカルディレクターに就任した[8]

エピソード

  • 技術部門を統括するにあたって、対立を厭わず攻撃的な管理スタイルを採るため、「ブルドッグ」というあだ名を持つ。
  • ガスコインの出身地であるイギリスノーフォークは、同時にロータスの本拠地でもある為に彼の青春時代から「ロータス」という名称に対して非常に思い入れがあると言われている。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b (Joe Saward) grandprix.com-ENCYCLOPEDIA-"Mike Gascoyne" (2006年以降の執筆)
  2. ^ WebCG有吉 (2006年4月7日). “【F1 2006】ガスコイン、トヨタ離脱が正式に決まる”. カーグラフィック. http://www.webcg.net/WEBCG/news/000018035.html 2012年4月25日閲覧。 
  3. ^ 『F1 Racing 2005年2月情報号』 イデア。
  4. ^ “ロータス、マイク・ガスコインとの契約を2015年まで延長”. F1 Gate.com. (2010年9月29日). http://f1-gate.com/lotus/f1_9351.html 2010年10月3日閲覧。 
  5. ^ “スティーブ・ニールセン、チーム・ロータスに加入”. F1-Gate.com. (2011年11月8日). http://f1-gate.com/lotus/f1_13493.html 2012年3月17日閲覧。 
  6. ^ “ケータハム、マクラーレンの空力ボスの獲得を発表”. オートスポーツweb. (2011年12月9日). https://www.as-web.jp/past/%e3%82%b1%e3%83%bc%e3%82%bf%e3%83%8f%e3%83%a0%e3%80%81%e3%83%9e%e3%82%af%e3%83%a9%e3%83%bc%e3%83%ac%e3%83%b3%e3%81%ae%e7%a9%ba%e5%8a%9b%e3%83%9c%e3%82%b9%e3%81%ae%e7%8d%b2%e5%be%97%e3%82%92%e7%99%ba 2012年3月17日閲覧。 
  7. ^ “ガスコインがグループCTOに昇進”. ESPN F1. (2012年2月17日). http://ja.espnf1.com/caterham/motorsport/story/70535.html 2012年3月17日閲覧。 
  8. ^ 2017.08.15 【あなたは何しに?】ガスコインが2シーターF1マシンのテクニカルディレクターに就任した理由 - オートスポーツ・2017年8月15日

外部リンク

  • Welcome to the MGI Group MGIグループ公式サイト(英語)
  • Caterham Challenge ケータハムチャレンジ(英語)
  • MGI Engineering Ltd. about us MGI エンジニアリング(英語)
  • Vertical Aerospace Group(Bristol) 電気垂直離着陸機(eVTOL)に技術提供(英語)
  • Mike Gascoyne (@MikeGascoyne) - X(旧Twitter)
マレーシアの旗 ケータハムF1チーム
創設者
  • マレーシアの旗 トニー・フェルナンデス
主なチーム関係者
ドライバー
ロータス
ケータハム
F1マシン
ロータス
ケータハム
主なスポンサー
インドの旗 フォース・インディア
創設者
歴代チーム関係者
歴代ドライバー
F1マシン
エンジンサプライヤー
関連会社
  • インドの旗 ユナイテッド・ブリュワリーズ・グループ(英語版)
  • インドの旗 サハラ・インディア・パリワール(英語版)
オランダの旗 スパイカーF1
主なチーム関係者
ドライバー
テスト/リザーブドライバー
F1マシン
主なスポンサー
日本の旗 トヨタF1
主なチーム関係者
主なドライバー
テスト/リザーブドライバー:
車両
主なスポンサー
タイトルスポンサー:
スポンサー/サプライヤー:
エンジン供給
関連組織
関連項目
フランスの旗 ルノー F1
2016年 - 2020年
ワークスチーム
チーム首脳
主なスタッフ
主なドライバー
車両
主なスポンサー
関連組織
2002年 - 2011年
ワークスチーム
チーム首脳
主なスタッフ
主なドライバー
車両
タイトルスポンサー
主なスポンサー
関連組織
太字はルノーにおいてドライバーズワールドチャンピオンを獲得。
2001年 - 現在
エンジン供給
現在の関係者
過去の関係者
現在の供給先
過去の供給先
関連組織
※役職等は2023年2月時点。
1989年 - 1997年
エンジン供給
主な関係者
供給先
関連組織
1977年- 1985年
ワークスチーム
チーム首脳
主なスタッフ
主なドライバー
車両
主なスポンサー
エンジン供給先
関連組織
関連項目
※他チームへのエンジン供給は1983年から1986年にかけて行った。
イタリアの旗 ベネトン・フォーミュラ イギリスの旗
創設者
主なチーム関係者
主なドライバー
F1マシン
主なスポンサー
太字はベネトンにおいてドライバーズワールドチャンピオンを獲得。
アイルランドの旗 ジョーダン・グランプリ イギリスの旗
創設者
主なチーム関係者
主なドライバー
F3000ドライバー
F1マシン
主なスポンサー
スイスの旗 ザウバー・モータースポーツ
2024年 - 現在
F1
チーム首脳
主なスタッフ
  • イギリスの旗 ジェームス・キー (テクニカルディレクター)
  • スイスの旗 ビート・ツェンダー (スポーティングディレクター)
  • スペインの旗 セビ・プホラル(英語版) (トラックサイドエンジニアリング責任者)
  • イギリスの旗 ルース・バスクーム(英語版) (ストラテジスト)
過去の関係者
現在のドライバー
車両
現在のスポンサー
関連組織
※役職等は2023年12月時点。
2019年 - 2023年
2010年 - 2018年
F1
チーム首脳
主なスタッフ
主なドライバー
車両
主なスポンサー
関連組織
2006年 - 2009年
1993年 - 2005年
F1
創設者
チーム首脳
主なスタッフ
主なドライバー
車両
主なスポンサー
関連組織
  • スイスの旗 PPザウバーAG
  • スイスの旗 ザウバー・ペトロナス・エンジニアリング(英語版)(SPE)
  • リヒテンシュタインの旗 フリッツ・カイザー・グループ(英語版)(FKG)
1991年以前
  • 「Template:ザウバー・メルセデス」を参照
イタリアの旗 フォンドテック (サブコンストラクター, 空力サービス)
設立創業者
設立関係者
主な関係者
風洞
イタリアの旗 カズマロ風洞


イタリアの旗 ボロニェーゼ風洞
  • イタリアの旗 サンタガータ・ボロニェーゼ風洞
イタリアの旗 Aerolab風洞
  • イタリアの旗 サンタガータ・ボロニェーゼ風洞(同敷地内にダラーラの資本参加で)
F1マシン/
空力担当者
イギリスの旗 ティレル

  • (1996-1997)
  • 024
  • 025 / イギリスの旗 マイク・ガスコイン

イギリスの旗 ジョーダン


イタリアの旗 ベネトン


  • (2001)
  • B201 / イギリスの旗 マイク・ガスコイン

フランスの旗 ルノー

イタリアの旗 ミナルディ
イギリスの旗 ジャガー
オーストリアの旗 レッドブル
イタリアの旗 トロ・ロッソ
日本の旗 トヨタ
オランダの旗 スパイカー
マレーシアの旗 ロータス
マレーシアの旗 ケータハム
イギリスの旗 ティレル
創設者
主なチーム関係者
主なドライバー
1970年代
1980年代
1990年代
太字はティレルにおいてドライバーズワールドチャンピオンを獲得。
車両
主なスポンサー
タイトルスポンサー:
スポンサー/サプライヤー: