角回

脳: 角回
脳における主要な言語野を示すブロードマンの脳地図における39野は赤で示す。
大脳と頭蓋骨の関係を描く。(角回は左上の黄色で示された領域内にある)
名称
日本語 角回
英語 angular gyrus
ラテン語 gyrus angularis
略号 AnG, Ga
関連構造
上位構造 頭頂葉下頭頂小葉
画像
アナトモグラフィー 三次元CG
Digital Anatomist 左側面
右側面
左側面+島
関連情報
Brede Database 階層関係、座標情報
NeuroNames 関連情報一覧
NIF 総合検索
グレイ解剖学 書籍中の説明(英語)
テンプレートを表示

角回(かくかい、: angular gyrus)は、大脳の領域のひとつ。頭頂葉の外側面にある脳回。角回は側頭葉の上端付近に位置し、縁上回の後端と接する。縁上回と合わせて下頭頂小葉を構成する。角回の下部と縁上回の下部、そして上側頭回の後部は、あわせて側頭頭頂接合部として扱われる。角回は言語認知などに関連する多数の処理に関わっているとされている。角回はブロードマンの脳地図における39野にあたる。

機能

言語における役割

ゲシュウィンドは文字が角回を介して内言へと変換されるという説を唱えた。

カリフォルニア大学サンディエゴ校の神経科学研究所 (Center for Brain and Cognition) の所長であるV・S・ラマチャンドランは、角回が隠喩の理解を、少なくとも部分的に担っているという研究を指揮した。左角回に損傷を受けた右利きの患者は、言語理解は正常に見えるにもかかわらず、隠喩の二重性を理解できなかった。慣用的な隠喩句を呈示しても患者は文字通りの意味でしか解釈できなかった。強いて解釈してもらうと、彼らは乱暴な解釈を作り出すが、正解からは程遠いものだった[1]

別の実験では、角回損傷患者におけるブーバ/キキ効果が調べられた。この効果は正常者の90%以上でみられるのに対し、これらの患者では観察されなかった このことは視覚刺激を言語化することに関する障害が起きたためと考えられる。

ヒト科動物は他の霊長類に比べて、脳に対し角回が大きいという事実と、角回の触覚、聴覚、視覚処理における交差点的な役割から、ラマチャンドランは概念的隠喩と、より一般的なクロスモダリティー的抽象化の両方に、角回が決定的な役割をもつと考えた。

体外離脱体験

最近の研究において、角回の刺激が体外離脱体験を引き起こす可能性を示したものがある[2]。ある実験では、角回を刺激された女性が、彼女の背後に存在する幻影を感じ[3]、また、別の同種の実験では、被験者が天井にいるような感覚を味わった。このことは、身体が実際に存在する位置と意識が知覚している身体の位置との不一致によるものと考えられる。

参考画像

  • 角回の位置。赤い所が角回。
    角回の位置。赤い所が角回。
  • 左大脳半球の側面を上からみた図。オレンジ色の所が角回。
    左大脳半球の側面を上からみた図。オレンジ色の所が角回。
  • 左大脳半球の側面を横からみた図。オレンジ色の所が角回。
    左大脳半球の側面を横からみた図。オレンジ色の所が角回。
  • ブロードマンの脳地図における39野

日本語のオープンアクセス文献

  • 川村光毅「角回を中心とする皮質間線維連絡」『失語症研究』第2巻第1号、1982年、208–214頁、doi:10.2496/apr.2.208。 
  • 柳沼重弥、菊池礼司、岩井 栄一「下頭頂小葉皮質後半部 (角回) の機能に関する実験 (サル) 及び臨床神経心理学的研究の展望」『失語症研究』第2巻第1号、1982年、215–224頁、doi:10.2496/apr.2.215、ISSN 0285-9513。 

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ V. S. Ramachandran, 2004. A Brief Tour of Human Consciousness. Pi Press, pp.60-82.
  2. ^ Out-of-Body Experience? Your Brain Is to Blame - New York Times
  3. ^ Arzy, S., Seeck, M., Ortigue, S., Spinelli, L., Blanke, O., 2006. Induction of an illusory shadow person: Stimulation of a site on the brain's left hemisphere prompts the creepy feeling that somebody is close by. Nature, 443(21), pp.287.
ウィキメディア・コモンズには、角回に関連するカテゴリがあります。
外側面 外側溝内部 内側面 - 上部
脳底部 - 眼窩面 脳底部 - 側頭葉下面 内側面 - 下部
: 終脳 (大脳, 大脳皮質, 大脳半球 (en)
前頭葉
頭頂葉

中心後回, 体性感覚野 (一次体性感覚野 (1, 2, 3,43), 二次体性感覚野 (en(5)), 楔前部 (7m) - 頭頂弁蓋 (en

頭頂小葉 (上頭頂小葉 (7l), 下頭頂小葉 (40)), 縁上回 (40), 角回 (39)

中心後溝, 頭頂間溝, 縁溝

後頭葉
側頭葉(外・下)
辺縁皮質・島皮質

島皮質

帯状回: 膝下野 (en(25), 前帯状皮質 (24,32,33), 後帯状皮質 (23,31), 脳梁膨大後部皮質 (26,29,30)

海馬傍回 (27,28,34,35,36), 海馬鉤, 海馬体,(扁桃体の一部)
※ 内側側頭葉など他の脳葉に含めて扱われることもある。

脳葉間の脳溝など
白質

交連線維 - 連合線維

内包 (内包前脚, 内包膝, 内包後脚), 放線冠, 外包, 終板, 最外包, 半卵円中心 (en

嗅索 - 分界条 - ブローカー対角束

その他

嗅球, 前嗅核, 前有孔質, マイネルト基底核/無名質

線条体/淡蒼球/腹側線条体, 扁桃体, 前障

いくつかの領域分けは大まかなものになっている。

カッコ内の番号はブロードマンの脳地図における番号である。また、ブロードマンの脳地図における領域のいくつかは複数の脳回にまたがっている。
典拠管理データベース ウィキデータを編集
  • Terminologia Anatomica