ゴルゴーン

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愛馬ブケパロスに騎乗したアレクサンドロス大王。鎧にメドゥーサの首(拡大図)
紀元前660年頃の貯蔵用の大甕ピトスの表面に描かれたレリーフルーヴル美術館所蔵。
ジュリオ・アリスティド・サルトリオの1895年の絵画『ゴルゴーンの首』。

ゴルゴーン古希: Γοργών, Gorgōn)、またはゴルゴー古希: Γοργώ, Gorgō)は、ギリシア神話に登場する醜い女の怪物である[1][2]。その名は「恐ろしいもの」の意。

日本語では長母音記号を省略し、ゴルゴン[1]ゴルゴとも表記する。英語読みはゴーゴン(Gorgon)。

概要

ヘーシオドスの『神統記』やアポロドーロスによると、ゴルゴーンは海神ポルキュースとその妻ケートーの娘で、ステンノーエウリュアレーメドゥーサの3人からなる姉妹である。またグライアイとも姉妹である[3][4][5]エウリーピデースの奇妙な伝承によると、ゴルゴーンはギガントマキアーの際にガイアギガース族の味方として生み出したとある[6]。さらにヒュギーヌスはゴルゴーンとケートーからステンノー、エウリュアレー、メドゥーサが生まれたとしている。この伝承ではゴルゴーンは男の怪物となっている[7]

髪の毛の代わりに生きているが生えており[1]黄金の翼、青銅イノシシのようなを持つとされ、自らの翼で空を飛び、ゴルゴーンの顔を見た者を石化することができる[5]ボイオーティア地方から発見されルーブル美術館に所蔵されている大甕ピトスでは、下半身がになっているケンタウロス族のような姿(ただし足は二本)で描かれているが、ゴルゴーンの首に剣を向けているペルセウスはゴルゴーンを見ないように顔を背けている。その住処はヘーシオドスによると、オーケアノスの流れや「ヘスペリデスの園」の近くの世界の西の果ての地である[8]

神話

神話によると3姉妹のうちメドゥーサだけが不死ではなく、後にメドゥーサはペルセウスによって首を切られて退治された。その際、傷口からメドゥーサとポセイドーンの子クリューサーオールペーガソスが生まれた[9][10]。その後、ペルセウスはメドゥーサの首を使ってアンドロメダーや母ダナエーを救い出したと伝えられている。ペルセウスがキビシスからメドゥーサの首を取り出し、その首を向けられた者は何者であっても石と化した[11]。一説によるとメドゥーサはアテーナーと美を競ったために、アテーナーによって首を切られた[11]。さらにメドゥーサはアテーナーの怒りに触れて醜い姿にされたとする説も唱えられた[12]。ペルセウスは冒険が終わるとメドゥーサの首をアテーナーに捧げ、アテーナーは自らのアイギスにその首を取り付けたという[11]

ホメーロスは『イーリアス』の中で、ゼウスの盾アイギスに固定されているゴルゴーンの首について描写している[13]。アイギスは『イーリアス』においてはゼウスの持ち物であり[14]ヘーパイストスがゼウスのために制作したものである[15]。アイギスについては諸説あり、後世の神話ではアテーナーのアイギスは女神自身がゴルゴーンを倒した際に、その皮を剥いで作ったものだと語られている[16]

一方、『オデュッセイア』ではゴルゴーンの首は冥府の女王ペルセポネーが所持する魔物であるかのように描かれている(ただしこれはオデュッセウスの想像で実際には登場しない)[17]

魔除けとしてのゴルゴーン

ゴルゴーンの首は古代ギリシャにおいてはしばしば魔除けゴルゴネイオン、Gorgoneion)に用いられた[18]

ギリシア美術では「真正面を向いた」人物描写は少ないが、ゴルゴーンに限ってはほとんどが真正面を向いた形で描かれている。同様に「真正面」の描写が少ないメソポタミア・古代エジプト美術において常に真正面を向いて描かれるフンババ(同じく魔除けに使われた)やエジプトの神ベスとの共通点も指摘されている。正面を向いているのはゴルゴーンの持つ邪眼を機能させるためだとされている。

脚注

  1. ^ a b c ギリシア・ローマ神話事典』 260、261頁。
  2. ^ ギリシア神話』 290頁。
  3. ^ ヘーシオドス、270行-276行。
  4. ^ アポロドーロス、1巻2・6。
  5. ^ a b アポロドーロス、2巻4・2。
  6. ^ エウリーピデース『イオーン』987行-990行。
  7. ^ ヒュギーヌス、序文。
  8. ^ ヘーシオドス、274行-276行。
  9. ^ ヘーシオドス、277行-281行。
  10. ^ アポロドーロス、2巻4・2-4・3。
  11. ^ a b c アポロドーロス、2巻4・3。
  12. ^ 幻想世界の住人たち』96頁。
  13. ^ 『イーリアス』5巻741行-742行。
  14. ^ 『イーリアス』5巻733行以下。
  15. ^ 『イーリアス』15巻309行-310行。
  16. ^ エウリーピデース『イオーン』991行-996行。
  17. ^ 『オデュッセイア』11巻634行-635行。
  18. ^ 古代ギリシアがんちく図鑑』44頁。

参考文献

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