フロイデンタールのスペクトル定理

数学におけるフロイデンタールのスペクトル定理(フロイデンタールのスペクトルていり、: Freudenthal spectral theorem)とは、1936年にハンス・フロイデンタールによって証明されたリース空間論の一結果である。大まかに言うと、単項射影性質(principal projection property; 主射影性質)を持つリース空間内の一つの正元によって支配される任意の元は、ある種の単関数により一様に近似できる、ということが述べられている定理である。

数多くの有名な結果が、フロイデンタールのスペクトル定理から得られる。例えば、有名なラドン=ニコディムの定理ポアソンの公式の正当性、正規作用素の理論によるスペクトル定理などは、フロイデンタールのスペクトル定理の特別な場合として従うことが示される。

定理の主張

e はリース空間 E に属する任意の正元とする。E の正元 pe の成分 (component) であるとは、p ⊥ (ep) が成立することを言う[1]p1, p2, …, pn が互いに素な e の成分であるとき、p1, p2, …, pn の任意の実線型結合を e-単関数と呼ぶ。

定理 (Freudenthal)[2]
単項射影性質を持つリース空間 EE の任意の正元 e について、e の生成する主イデアル内の任意の元 f に対して、適当な e-単関数列 {sn} および {tn} が存在して、それぞれ下から単調に、および上から単調に、fe-一様に収束する。

ラドン=ニコディムの定理との関係

( X , Σ ) {\displaystyle (X,\Sigma )} 測度空間とし、 M σ {\displaystyle M_{\sigma }} ( X , Σ ) {\displaystyle (X,\Sigma )} 上の符号付 σ {\displaystyle \sigma } -加法的測度の実空間とする。 M σ {\displaystyle M_{\sigma }} 全変動ノルム(英語版)を備えるデデキント完備なバナッハ束であり、したがって主射影性を持つことが示される。任意の正測度 μ {\displaystyle \mu } に対し、上述のように定義される μ {\displaystyle \mu } -単関数は、 ( X , Σ ) {\displaystyle (X,\Sigma )} 上の μ {\displaystyle \mu } -可測単関数と(通常の意味で)ちょうど対応することが示される。さらに、フロイデンタールのスペクトル定理より、 μ {\displaystyle \mu } によって生成される帯(band)内の任意の測度 ν {\displaystyle \nu } ( X , Σ ) {\displaystyle (X,\Sigma )} 上の μ {\displaystyle \mu } -可測単関数によって下から単調な方法で近似されるため、ルベーグの単調収束定理より、 ν {\displaystyle \nu } はある L 1 ( X , Σ , μ ) {\displaystyle L^{1}(X,\Sigma ,\mu )} 関数に対応し、 μ {\displaystyle \mu } によって生成される帯とバナッハ束 L 1 ( X , Σ , μ ) {\displaystyle L^{1}(X,\Sigma ,\mu )} の間の等長束同型を構成することが示される。

関連項目

  1. ^ Luxemburg 1971. Def.38.1
  2. ^ Luxemburg 1971. Thm.40.2

参考文献

  • Zaanen, Adriaan C. (1996), Introduction to Operator Theory in Riesz spaces, Springer, ISBN 3-540-61989-5 
  • Zaanen, Adriaan C.; Luxemburg, W. A. J. (1971), Riesz spaces I, North-Holland, ISBN 0-7204-2451-8