サイカシン

サイカシン
Chemical structure of cycasin
サイカシンの構造。なおエーテル結合の先(図の右上部分)にアゾキシメタンが結合している。
(Z)-1-Methyl-2-({[(2S,3R,4S,5S,6R)-3,4,5-trihydroxy-6-(hydroxymethyl)oxan-2-yl]oxy}methyl)diazene 2-oxide
[(Z)-Methyl-ONN-azoxy]methyl β-D-glucopyranoside[1]
別称
β-D-Glucosyloxyazoxymethane; Methylazoxymethanol β-D-glucoside; Cycas revoluta glucoside
識別情報
CAS登録番号 14901-08-7 チェック
PubChem 5459896
ChemSpider 4573631
UNII 9H51HL0E1D チェック
KEGG C01418
MeSH D003492
ChEBI
  • CHEBI:CHEBI:17074
  • [O-]/[N+](=N/CO[C@@H]1O[C@@H]([C@@H](O)[C@H](O)[C@H]1O)CO)C
  • InChI=1S/C8H16N2O7/c1-10(15)9-3-16-8-7(14)6(13)5(12)4(2-11)17-8/h4-8,11-14H,2-3H2,1H3/b10-9-/t4-,5-,6+,7-,8-/m1/s1
    Key: YHLRMABUJXBLCK-LBCXAKKBSA-N
  • InChI=1/C8H16N2O7/c1-10(15)9-3-16-8-7(14)6(13)5(12)4(2-11)17-8/h4-8,11-14H,2-3H2,1H3/b10-9-/t4-,5-,6+,7-,8-/m1/s1
    Key: YHLRMABUJXBLCK-LBCXAKKBSA
特性
化学式 C8H16N2O7
モル質量 252.22 g mol−1
への溶解度 56.6 g/L[2]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

サイカシン英語: Cycasin)は、植物に含まれる化学物質(配糖体)の1つである。組成式C8H16N2O7分子量は約252である。特にソテツ(種子、葉、幹など全草)に含まれる毒物として知られる[3][4]

概要

サイカシンは、ソテツ類ソテツザミア・プミラ(英語版)などのザミア科)に含まれている。これらの植物からは、サゴと呼ばれる食用のデンプンを取ることができる。しかし、サイカシンはヒトなどに対して毒性があることが知られており、これらの植物から採取したデンプンを食用にするためには、サイカシンを取り除く必要がある。処理法としては、デンプンよりもサイカシンの方がはるかに水溶性が高いことを利用してにさらす方法の他、太陽光にさらして紫外線による分解を狙う方法などがある。

1955年、鹿児島大学農学部の西田孝太郎により構造決定がなされた[4]

オーストラリア原産のマクロザミア属(英語版)に含まれるマクロザミン(macrozamin)は、サイカシンのグルコースがプリミベロース(6-O-β-D-キシロピラノシル-D-グルコース)に置き換わったもので、同様に毒性を持つ[5]

機序

ヒトがサイカシンを口にすると、消化管内に住む細菌の持つβ-グルコシダーゼによって加水分解され、グルコースが切断されてメチルアゾキシメタノールが遊離する。メチルアゾキシメタノールだけでなく、代謝産物であるホルムアルデヒドジアゾメタンも毒性を持つ[4]

発がん性

サイカシンにはヒトに対して、肝毒性があることが知られている。また、ヒトに対する発がん性も疑われており、国際がん研究機関は、サイカシンをグループ2B (ヒトに対する発癌性が疑われる) [注釈 1]に分類している。この他、ウシがソテツの葉や種子などを食べると、サイカシンの影響によって、致命的な神経症状が現れることがあることも知られている。なお、サイカシンはメチル-ONN-アゾキシメタノール β-D-グルコシルトランスフェラーゼがUDP-グルコースメチルアゾキシメタノールアセタート(英語版)を基質としてUDPとともに生成する[6]

注釈

  1. ^ ヒトへの発がん性を示す証拠が限られていて、また、動物実験でも未だに充分な証拠は集まっていないものが分類されている。

脚注

  1. ^ b-D-Glucosyloxyazoxymethane, ChemSpider
  2. ^ “Showing Compound Cycasin (FDB018287) - FooDB”. 2021年9月21日閲覧。
  3. ^ Gert. L. LAQUEUR、小田嶋成和、ワラビおよびサイカシン (Cycasin) の癌原性 食品衛生学雑誌 Vol.12 (1971) No.1 P.1-3, doi:10.3358/shokueishi.12.1
  4. ^ a b c 守田則一、天然発癌物質ソテツ毒サイカシンの研究と Health and Human Ecology 民族衛生 Vol.76 (2010) No.6 P.235-236, doi:10.3861/jshhe.76.235
  5. ^ 西田孝太郎, 小林昭, 永浜伴紀「日本産ソテツの一新有毒配糖体Cycasinに関する研究」『鹿兒島大學農學部學術報告』第4巻、鹿児島大学、1955年11月、151-168頁、hdl:10232/2096ISSN 0453-0845、NAID 110004992900。 
  6. ^ Tadera K, Yagi F, Arima M and Kobayashi A (1985). “Formation of cycasin from methylazoxymethanol by UDP-glucosyltransferase from leaves of Japanese cycad”. Agric. Biol. Chem. 49 (9): 2827–2828. doi:10.1271/bbb1961.49.2827. 

参考文献