ゲルバー橋

ゲルバー橋 (Gerber bridge)は、片持ち部を有する橋梁[1]。英語からカンチレバー橋(かんちればーきょう、: cantilever bridge)とも呼ばれる。

概要

ゲルバー橋の各部の呼び方。各径間のうち固定されている側は定着径間(碇着径間、anchor arm, anchor span)。空中に突き出ている側は片持ち径間(cantilever arm, cantilever span)。2つのカンチレバーアームの間の部分は吊径間(suspended span)[1][2]
ゲルバー橋桁の構造を示したイラスト

ゲルバー橋は側径間から片持ち径間を張り出し、それにより吊径間を支持している構造である。片持ち桁と吊桁はヒンジによって連結されている[3]。連続橋では曲げモーメントが中間支点付近では負、支点中央では正となり、その中間では0に近い領域がある。この部分にヒンジを用いても応力状態は連続橋と同等とみなせる[2]。このため、連続橋同様に長支間に適用できる[1]。主構造が桁橋のものはゲルバー桁橋トラス橋のものはゲルバートラス橋と呼ばれる。

ゲルバー橋の利点は、連続桁構造と異なりヒンジを用いて静定構造としたため、コンピューターが普及していない時代にも不静定構造の設計を回避でき、また、橋脚上の支点沈下の影響を受けにくいため良く採用された[注釈 1]。日本においてはヒンジ部の維持管理性、走行性に問題を抱え、また耐震性に難があることなどから鋼橋・コンクリート橋とも1965年(昭和40年)以降採用例が減少しており、現代では新設されることはほとんどない[2][4]。ゲルバー橋のヒンジ部では応力集中が起こりやすく、そのため鋼材の亀裂やコンクリートのひび割れが生じやすい。このため日本では、1993年(平成5年)の道路橋示方書改訂において活荷重が改訂された際に弱点部を補強することが行われた[4]

ゲルバー橋はハインリッヒ・ゲルバー(ドイツ語版)が1867年に考案した[5]

具体例

世界の支間長順のゲルバー橋の例[6]

  1. ケベック橋カナダケベック州、1919年) 1,800フィート (549 m)
  2. フォース橋スコットランドフォース湾、1890年)1,710フィート (521 m)
  3. 港大橋大阪市、1974年) 1,673フィート (510 m)
  • 松本橋(現存せず) - PCゲルバー桁橋
    松本橋(現存せず) - PCゲルバー桁橋
  • 相模大橋 - 5径間鋼ゲルバー桁橋
    相模大橋 - 5径間鋼ゲルバー桁橋
  • 長生橋 - 13径間ゲルバートラス橋
    長生橋 - 13径間ゲルバートラス橋
  • 栄橋 - RCゲルバーローゼ桁+RC桁橋
    栄橋 - RCゲルバーローゼ桁+RC桁橋

脚注

[脚注の使い方]

注釈

  1. ^ 不静定のゲルバー橋も構造的には成立する[1]

出典

  1. ^ a b c d 古川一郎 1965, p. 213.
  2. ^ a b c 倉西茂 & 中村俊一 2018, p. 69.
  3. ^ 古川一郎 1965, p. 217.
  4. ^ a b 多田宏行 2015, p. 12.
  5. ^ 「老朽化したゲルバー形式橋梁の補修について」(PDF)『平成30年度近畿地方整備局研究発表会 論文集 一般部門(安全・安心)I』、2023年1月9日閲覧 
  6. ^ Durkee, Jackson (1999-05-24) (PDF). National Steel Bridge Alliance: World's Longest Bridge Spans. American Institute of Steel Construction, Inc. オリジナルの2002-06-01時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20020601114245/http://www.aisc.org/Content/ContentGroups/Documents/NSBA5/20_NSBA_LongestSpans.PDF 2007年11月3日閲覧。 

参考文献

  • 古川一郎『橋梁工学』(改定版)森北出版、1965年。 
  • 倉西茂、中村俊一『最新 橋構造』(第3版)森北出版、2018年11月30日。ISBN 978-4-627-43023-5。 
  • 多田宏行『保全技術者のための橋梁構造の基礎知識』(改定版)鹿島出版会、2015年5月20日。ISBN 978-4-306-02472-4。 

関連項目

外部リンク

  • "Cantilever Bridge" by Sándor Kabai, The Wolfram Demonstrations Project, 2007.
  • Bridges – Their Structure and Function, Brantacan
  • Biggest of Finished Girders Go Traveling: six giants of 70 tons gave engineers a hard nut to crack, Popular Science monthly, February 1919, page 79, Scanned by Google Books: https://books.google.com/books?id=7igDAAAAMBAJ&pg=PA79
  •  "Bridge, Cantilever" . The New Student's Reference Work  (英語). 1914.
形式
可動橋
  • 跳開橋 (en)
  • 引込橋 (en)
  • 運搬橋
  • 折畳み橋 (en)
  • 降開橋 (en)
  • 旋回橋 (en)
  • 昇開橋 (en)
  • テーブル橋 (en)
  • カーリング橋 (en)
  • 跳ね橋
  • ガスリー・ローリング橋 (en)
  • ダブルビーム跳ね橋
  • 傾斜橋 (en)
形式別一覧
  • 橋の一覧
  • カンチレバー橋 (en)
  • 多層橋 (en)
  • 跳開橋 (en)
  • 鉄道道路併用橋 (en)
  • ドイツの中世の石橋 (en)
  • 橋トンネル (en)
  • 屋根付橋 (en)
  • 有料橋 (en)
サイズ別一覧
  • 最高の橋(構造上の高さ) (en)
  • 最高の橋(デッキ高) (en)
  • 最長の橋 (en)
  • 支間長順のアーチ橋 (en)
  • 支間長順のカンチレバー橋 (en)
  • 支間長順の斜張橋 (en)
  • 支間長順の石造アーチ橋 (en)
  • 支間長順の吊橋
  • 支間長順の連続トラス橋 (en)
関連項目
  • 孤立した橋 (en)
  • 橋事故の一覧 (en)
  • カテゴリ カテゴリ
  • コモンズ コモンズ
  • ポータル 交通ポータル
  • ポータル 交通史ポータル
  • ポータル 道路ポータル
典拠管理データベース: 国立図書館 ウィキデータを編集
  • フランス
  • BnF data
  • イスラエル
  • アメリカ