カマウロを被った教皇パウルス3世の肖像

『カマウロを被った教皇パウルス3世の肖像』
イタリア語: Ritratto di Paolo III con il camauro
英語: Portrait of Pope Paul III with Camauro
作者ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
製作年1545-1546年ごろ
種類キャンバス上に油彩
寸法113.7 cm × 88.8 cm (44.8 in × 35.0 in)
所蔵カポディモンテ美術館ナポリ

カマウロを被った教皇パウルス3世の肖像』(カマウロをかぶったきょうこうパウルスさんせいのしょうぞう、: Ritratto di Paolo III con il camauro: Portrait of Pope Paul III with Camauro)、または『帽子を被った教皇パウルス3世の肖像』(ぼうしをかぶったきょうこうパウルスさんせいのしょうぞう、: Portrait of Pope Paul III with Cap)は、イタリア盛期ルネサンスのヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオが1545-1546年ごろ、キャンバス上に油彩で制作した絵画である[1]。作品は現在、ナポリカポディモンテ美術館に所蔵されている[2][3]

作品

本作、『教皇パウルス3世の肖像』、『教皇パウルス3世とその孫たち』 (ともにカポデイモンテ美術館) の3作品の比較による教皇の明らかな年齢から判断すると、本作は『教皇パウルス3世の肖像』の直後に、そして『教皇パウルス3世とその孫たち』の以前に制作されたものである[2]。この推測は、基本的に本作の教皇像から伝わる年齢にもとづいており、75歳の教皇を表した最初の肖像より老いている一方、2人の孫たちとともにいる教皇よりは老いていない[3]ジョルジョ・ヴァザーリの『画家・彫刻家・建築家列伝』によれば、本作は、教皇空位期間管理局 (Apostolic Camera) 局長でパウルス3世の孫であった枢機卿グイド・アスカーニオ・スフォルツァ・ディ・サンタ・フィオーラ(英語版)のために制作された[4][5]。最初のパウルス3世の肖像画とは異なり、この作品は、教皇の帽子であるカマウロ(英語版)を被っているパウルス3世が指輪のある手の中に巻物を持っており、背景の片側には風景が見える[2]。カマウロを被った本作のヴァージョンがウィーン美術史美術館サンクトペテルブルクエルミタージュ美術館に所蔵されている。両作はティツィアーノの真筆であるかどうかははっきりしない[2]

来歴

この作品は当初、ファルネーゼ家の美術収集家で蔵書管理人であったフルヴィオ・オルシーニ(英語版)に、次いでオドアルド・ファルネーゼ(英語版)に所有された。オドアルドは、ローマファルネーゼ宮殿にあったティツィアーノによる他の家族の肖像画に本作を加えた。17世紀に、本作とローマのファルネーゼ家のコレクションはパルマに移され[2][3]、パルマではティツィアーノの『アレッサンドロ・ファルネーゼ枢機卿の肖像』と『ピエール・ルイージ・ファルネーゼの肖像(英語版)』と並べて掛けられたが、後に同じパルマのピロッタ宮殿 (Palazzo della Pilotta) に移された[3]。カルロス3世 (スペイン王) が母エリザベッタ・ファルネーゼの死後、王位に就くと、本作を含むコレクションは1734年ごろナポリに移された[2]。 この作品は最初、カポデイモンテ宮殿に、次いでナポリ王宮に、その後、ストゥーディ宮殿(イタリア語版)に移されたが、最終的にカポデイモンテ宮殿に戻された[3]。本作と『ピエール・ルイージ・ファルネーゼの肖像』は両方とも保存状態が悪かったために工房作に格下げされていた[2]が、20世紀半ばの修復と調査によって、本作は新しい支持体に移転され、ティツィアーノの真筆であることが再確認された[2]

ギャラリー

  • ティツィアーノ『教皇パウルス3世の肖像』(1543年)、カポディモンテ美術館、ナポリ
    ティツィアーノ『教皇パウルス3世の肖像』(1543年)、カポディモンテ美術館、ナポリ
  • ティツィアーノ『教皇パウルス3世とその孫たち』(1545-1546年)、カポディモンテ美術館、ナポリ
    ティツィアーノ『教皇パウルス3世とその孫たち』(1545-1546年)、カポディモンテ美術館、ナポリ

脚注

  1. ^ “Portrait of Pope Paul III with 'Camauro' - Titian” (英語). Google Arts & Culture. 2023年7月15日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h AA. VV. (2006) (イタリア語). Tiziano e il ritratto di corte da Raffaello ai Carracci.. Approximately Titian, Museo e gallerie nazionali di Capodimonte. Naples: Electa Napoli. pp. 148. ISBN 88-510-0336-X. OCLC 68598735. https://www.worldcat.org/oclc/68598735 
  3. ^ a b c d e (イタリア語) AA. VV., I Farnese. Arte e collezionismo, Milano, Editrice Electa, 1995, ISBN 978-8843551323, pp. 210-212.
  4. ^ (イタリア語) AA. VV., I Farnese. Arte e collezionismo, Milano, Editrice Electa, 1995, ISBN 978-8843551323, pp. 206-207
  5. ^ (イタリア語) AA. VV., Tiziano e il ritratto di corte da Raffaello ai Carracci, Napoli, Editrice Electa, 2006, ISBN 978-8851003364, p 138.

参考文献

  • (イタリア語) Guida al Museo Nazionale di Capodimonte, Editrice Electa (2006).
世俗画
肖像画
宗教画
  • 聖母子とパドヴァの聖アントニウス、聖ロクス』(1508年頃)
  • 『十字架を担うキリスト』(1510年頃)
  • 聖家族と羊飼い』(1510年頃)
  • 新生児の奇蹟』(1511年)
  • ジプシーの聖母』(1511年頃)
  • 『キリストの洗礼』(1511年-1512年頃)
  • 『大天使ラファエルとトビアス』(1512年-1514年頃)
  • 『ノリ・メ・タンゲレ』(1514年頃)
  • サクランボの聖母』(1515年)
  • 『貢の銭』(1516年)
  • 聖母子と聖ドロテア、聖ゲオルギウス』(1516年–1518年頃)
  • 『聖母被昇天』(1516年–1518年頃)
  • 『受胎告知(トレヴィーゾ大聖堂)』(1520年頃)
  • 『キリストの埋葬(ルーヴル美術館)』(1520年頃)
  • アヴェロルディ家の祭壇画』(1520年–1522年)
  • ペーザロ家の祭壇画』(1519年–1526年頃)
  • 聖母子と聖カテリナと羊飼い』(1530年頃)
  • 『アルドブランディーニの聖母』(1532年頃)
  • 『悔悛するマグダラのマリア(パラティーナ美術館)』(1533年頃)
  • 『受胎告知(サン・ロッコ大同信会)』(1535年頃)
  • 『聖母の神殿奉献』(1534年-1538年頃)
  • シャッラの聖母』(1540年年頃)
  • 『洗礼者聖ヨハネ』(1540年-1542年頃)
  • 『荊冠のキリスト(ルーヴル美術館)』(1542年-1543年)
  • 『この人を見よ(ウィーン)』(1543年)
  • 『悔悛するマグダラのマリア(カポディモンテ美術館)』(1550年頃)
  • 『アダムとイヴ』(1550年頃)
  • 『ラ・グロリア(聖三位一体の礼拝)』(1551年-1554年)
  • 『聖ラウレンティウスの殉教』(1548年-1559年頃)
  • 『キリストの埋葬(プラド美術館)』(1559年)
  • 『ゲツセマネの祈り』(1558年-1562年頃)
  • 『受胎告知(サン・サルバドール教会)』(1559年-1564年頃)
  • アルベルティーニの聖母』(1560年–1565年頃)
  • 『悔悛するマグダラのマリア(エルミタージュ美術館)』(1565年頃)
  • 『聖マルガリタ』(1565年頃)
  • 『祝福するキリスト』(1570年頃)
  • 『荊冠のキリスト(ミュンヘン)』(1570年頃)
  • 『聖セバスティアヌス』(1570年-1572年)
  • スペインによって救済される宗教』(1572年-1575年)
  • 『ピエタ』(1575年-1576年)
関連項目
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