エゼルレッド2世 (イングランド王)

エゼルレッド無策王
 : Æthelred II
古英 : Æþelræd II
古ノルド : Aðalráðr II
13世紀初頭の写本に描かれたエゼルレッド2世

在位期間
978年3月18日1013年
先代 エドワード殉教王[1]
次代 スヴェン双叉髭王[1]
先代 スヴェン双叉髭王
次代 エドマンド剛勇王

出生 966年[1]
イングランド
死亡 1016年4月23日
享年約50歳[1]
イングランド
ロンドン
埋葬 ロンドン
オールド・セント・ポール大聖堂(英語版)
(現存せず)
王室 ウェセックス家
父親 エドガー平和王
母親 エルフスリス(英語版)
配偶者
子女
  • アセルスタン・アシリング(英語版)
  • エクバート・アシリング
  • エドマンド剛勇王
  • エドレッド・アシリング(英語版)
  • エドウィ・アシリング(英語版)
  • エドガー・アシリング
  • エドギタ(マーシア領主夫人)
  • エルフギフ(ノーザンブリア領主夫人)
  • ウィルフヒルド(イーストアングリア領主夫人)
  • エドワード懺悔王
  • アルフレッド・アシリング
  • ゴーディヴ(英語版)
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エゼルレッド2世

エゼルレッド2世英語: Æthelred II古英語: Æþelræd968年 - 1016年4月23日)は、イングランド王(在位:978年 - 1013年1014年 - 1016年)。「エゼルレッド無思慮王」、「エゼルレッド無策王」(英語: Æthelred the Unready)とも称される。エドガー平和王とその妻エルフリーダ・オブ・デヴォン(英語版)の子。

生涯

978年、兄のエドワード殉教王が暗殺されたため10歳で王位についた。エゼルレッドは、その治世を通じて絶えずデーン人の侵入に苦しめられた。デーン人が侵入する都度、イングランドは「デーンゲルド」と称される退去料を支払ってきた。これは一時的な平和には寄与したものの、度重なる支払いでイングランド財政には大きな負担となった。

エゼルレッドは、デーン人がノルマンディーを拠点としてイングランドに攻撃を仕掛けることを恐れた。そのため、ノルマンディー公国と友好関係の樹立を図り、ノルマンディー公リシャール1世の娘エマと結婚した。

また、エゼルレッドはデーン人に対する懸念から、国内のデーン人を虐殺した。このことは、当時のデンマーク王スヴェン1世の反発を招き、デーン人の侵入を激化させることになった。イングランドの国内勢力をまとめ上げることもかなわず、ついに1013年、デーン人の攻撃に屈して姻戚関係にあったノルマンディーへの亡命を余儀なくされた。

こうしてスヴェン1世にイングランド王位を奪われたが、翌1014年にスヴェン1世が急逝した。そのため、エゼルレッドはイングランドに帰国して復位を果たした。しかし、デーン人のカヌート(のちのデンマーク王クヌーズ2世)がイングランド遠征を引き継いだため、引き続きデーン人との攻防は続いた。だが、1015年には3代の国王に仕えて「デーンゲルド」政策推進の中心人物であった重臣エアドリチがカヌートに内応して離反してしまう。これによってイングランド側は苦境に立たされる。こうした状況の中、生涯を通じてデーン人と争ったエゼルレッドは、1016年に病没した。

その後、エゼルレッドの息子エドマンド2世が王位を継承した。しかし、間もなくエドマンドも死去したため、デーン人のカヌートがイングランドの王位につくことになる。

エゼルレッドはオールド・セント・ポール大聖堂(英語版)に埋葬されたが、その墓は1666年のロンドン大火で聖堂とともに焼失した。

なお、エゼルレッドは1010年に勅令を発布し、教会が十分の一税の徴収額の三分の一を貧民救済のために支出することを命じた。薬師院仁志によると、これは、ヘンリー8世およびエリザベス1世の救貧制度の起源とも言われる。

評価

マンクス金貨に描かれたエゼルレッド2世の肖像

デーン人に国を奪われたために後世「無思慮王」と呼ばれ、歴代のイングランド王の中でもジョン王と並ぶ暗君と言われ続けた。一方で、同時期の古文書の研究の進展とともに、エゼルレッドの治世において初めて文書による行政運営が行われたことや、法典編纂などが進められた事がわかり、その後のイングランドの政治の範となった要素も少なくないことが知られてきた。

子女

最初に、ノーサンブリア伯トレド(Thored)の娘エルフギフ・オブ・ヨーク(英語版)と結婚した。エルフギフは1002年に死去した。

  • アゼルスタン(? - 1014年)
  • エグバート(? - 1005年)
  • エドマンド2世(988/993年 - 1016年) - イングランド王(1016年4月 - 11月)
  • エドレッド(? - 1013年以前)
  • エドウィ(? - 1017年)
  • エドワード
  • エドガー(? - 1008年)
  • エディス - マーシア伯エドリック・ストレオナと結婚
  • エルギヴァ - ノーサンブリア伯ウートレッド(ノーサンブリア伯ワルセオフの子)と結婚
  • ウルフヒルダ - イーストアングリア伯ウールヴケル(Ulfcytel Snillingr)と結婚
  • 娘 - アゼルスタンと結婚

1002年、ノルマンディー公リシャール1世の娘エンマと結婚した。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d Weir, Alison (1989). Britain's Royal Families. Vintage. p. 23. ISBN 9780099539735 

参考文献

  • P.W.Montague-Smith et al. The Royal Line of Succession Pitkin Guides Ltd, 1986.
  • John Cannon, The Oxford illustrated history of the British monarchy, Oxford University Press, 1988.
イングランド王国旗イングランド国王(978年 - 1013年 / 1014年 - 1016年)イングランド王国章
ウェセックス朝
デーン朝
  • スヴェン1013-1014
ウェセックス朝
  • エゼルレッド2世1014-1016
  • エドマンド2世1016
デーン朝
ウェセックス朝
ノルマン朝
  • ウィリアム1世1066-1087
  • ウィリアム2世1087-1100
  • ヘンリー1世1100-1135
  • マティルダ(イングランド人の女君主)1141-1148
ブロワ朝
  • スティーヴン1135-1154
プランタジネット朝
  • ヘンリー2世1154-1189
  • 若ヘンリー(共同王)1170-1183
  • リチャード1世1189-1199
  • ジョン1199-1216
  • ヘンリー3世1216-1272
  • エドワード1世1272-1307
  • エドワード2世1307-1327
  • エドワード3世1327-1377
  • リチャード2世1377-1399
ランカスター朝
  • ヘンリー4世1399-1413
  • ヘンリー5世1413-1422
  • ヘンリー6世1422-1461
ヨーク朝
  • エドワード4世1461-1470
ランカスター朝
  • ヘンリー6世(復位)1470-1471
ヨーク朝
  • エドワード4世(復位)1471-1483
  • エドワード5世1483
  • リチャード3世1483-1485
テューダー朝
  • ヘンリー7世1485-1509
  • ヘンリー8世1509-1547
  • エドワード6世1547-1553
  • ジェーン・グレイ1553
  • メアリー1世1553-1558
  • フィリップ(共同王)1554-1558
  • エリザベス1世1558-1603
ステュアート朝
  • ジェームズ1世1603-1625
  • チャールズ1世1625-1649
  • チャールズ2世1660-1685
  • ジェームズ2世1685-1688
  • メアリー2世1689-1694
  • ウィリアム3世1689-1702
  • アン1702-1707
1707年スコットランド王国と合同してグレートブリテン王国が成立、アンはグレートブリテン女王として1714年まで在位。
1603年までのイングランド君主1603年までのスコットランド君主
  • アルフレッド大王871-899
  • エドワード長兄王899-924
  • アゼルスタン924-939
  • エドマンド1世939-946
  • エドレッド946-955
  • エドウィ955-959
  • エドガー959-975
  • エドワード殉教王975-978
  • エゼルレッド2世978-1013
  • スヴェン1013-1014
  • エゼルレッド2世1014-1016
  • エドマンド2世1016
  • クヌート大王1016-1035
  • ハロルド1世1035-1040
  • ハーディカヌート1040-1042
  • エドワード懺悔王1042-1066
  • ハロルド2世1066
  • エドガー・アシリング (王位請求者)1066
  • ウィリアム1世1066-1087
  • ウィリアム2世1087-1100
  • ヘンリー1世1100-1135
  • マティルダ (イングランド人の女君主)1141-1148
  • スティーヴン1135-1154
  • ヘンリー2世1154-1189
  • 若ヘンリー (共同王)1170-1183
  • リチャード1世1189-1199
  • ジョン1199-1216
  • ヘンリー3世1216-1272
  • エドワード1世1272-1307
  • エドワード2世1307-1327
  • エドワード3世1327-1377
  • リチャード2世1377-1399
  • ヘンリー4世1399-1413
  • ヘンリー5世1413-1422
  • ヘンリー6世1422-1461
  • エドワード4世1461-1470
  • ヘンリー6世 (復位)1470-1471
  • エドワード4世 (復位)1471-1483
  • エドワード5世1483
  • リチャード3世1483-1485
  • ヘンリー7世1485-1509
  • ヘンリー8世1509-1547
  • エドワード6世1547-1553
  • ジェーン・グレイ1553
  • メアリー1世1553-1558及びフィリップ1554-1558(共同王)
  • エリザベス1世1558-1603
  • ケネス1世848-858
  • ドナルド1世(英語版)859-863
  • コンスタンティン1世(英語版)863-877
  • エイ(英語版)877-878
  • ギリック(英語版)878-889
  • ヨーカ(英語版)878-889
  • ドナルド2世889-900
  • コンスタンティン2世(英語版)900-942
  • マルカム1世(英語版)942-954
  • インダルフ(英語版)954-962
  • ダフ(英語版)962-967
  • カリン(英語版)967-971
  • ケネス2世(英語版)971-995
  • コンスタンティン3世(英語版)995-997
  • ケネス3世(英語版)997-1005
  • マルカム2世1005-1034
  • ダンカン1世1034-1040
  • マクベス1040-1057
  • ルーラッハ1057-1058
  • マルカム3世1058-1093
  • ドナルド3世1093-1094
  • ダンカン2世1094
  • ドナルド3世1094-1097
  • エドガー1097-1107
  • アレグザンダー1世1107-1124
  • デイヴィッド1世1124-1153
  • マルカム4世1153-1165
  • ウィリアム1世1165-1214
  • アレグザンダー2世1214-1249
  • アレグザンダー3世1249-1286
  • マーガレット1286-1290
  • ジョン・ベイリャル1292-1296
  • ロバート1世1306-1329
  • デイヴィッド2世1329-1371
  • エドワード・ベイリャル1332-1356
  • ロバート2世1371-1390
  • ロバート3世1390-1406
  • ジェームズ1世1406-1437
  • ジェームズ2世1437-1460
  • ジェームズ3世1460-1488
  • ジェームズ4世1488-1513
  • ジェームズ5世1513-1542
  • メアリー1世1542-1567
  • ジェームズ6世1567-1625
    • 1603年の王冠連合後のイングランド及びスコットランドの君主
  • ジェームズ1世及び6世1603-1625
  • チャールズ1世1625-1649
  • 護国卿政府 (オリバー・クロムウェル1653-1658リチャード・クロムウェル1658-1659)
  • チャールズ2世1660-1685
  • ジェームズ2世及び7世1685-1688
  • ウィリアム3世及び2世1689-1702及びメアリー2世1689-1694(共同王)
  • アン1702-1707
    • 1707年合同法後のイギリス君主
  • アン1707-1714
  • ジョージ1世1714-1727
  • ジョージ2世1727-1760
  • ジョージ3世1760-1820
  • ジョージ4世1820-1830
  • ウィリアム4世1830-1837
  • ヴィクトリア1837-1901
  • エドワード7世1901-1910
  • ジョージ5世1910-1936
  • エドワード8世1936
  • ジョージ6世1936-1952
  • エリザベス2世1952-2022
  • チャールズ3世2022-
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