イントゥルーダー

イントゥルーダー
著者 高嶋哲夫
発行日 1999年4月20日(単行本)
2002年3月10日(文庫本)
2022年1月10日(文庫本)
発行元 文藝春秋
ジャンル ミステリー
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判上製 カバー装
文庫本
ページ数 328(単行本)
384(文庫本)
400(文庫本)
コード ISBN 978-4163185101
ISBN 4-16-765627-2
ISBN 978-4-16-791815-6(文庫本)
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イントゥルーダー』は、高嶋哲夫による日本の小説。

25年ぶりに不意に電話をしてきた恋人から、自分に息子がいて交通事故に遭って重体であることを知らされる。これ以降、様々なことが自分の日常生活に侵入してきて、息子の交通事故が原発建設に絡まるハイテク犯罪に巻き込まれていく。

1999年、サントリーミステリー大賞読者賞を受賞し、同年、テレビドラマ化された。

2002年3月10日に文春文庫にて文庫化。2022年1月4日に、『イントゥルーダー 真夜中の侵入者』と改題の上、文庫化された。

あらすじ

11月27日

午前零時ごろ、羽嶋の携帯に、松永奈津子から「あなたの息子が重体です」と電話がかかってくる。 彼女は25年ほど前、つまり羽嶋が大学4年のころに2カ月ほど同居していたことがあった。

翌朝、羽嶋は、2人組の警察官から慎司の事故について説明を受けた。 説明によると、慎司が事故にあったのは深夜の風俗店が並ぶ街で、路上で車と接触して引きずられ、頭部を強打した。また、酩酊状態で、車が来てもよけようとしなかったという。

警察官が帰った後、羽嶋は何をしたらいいのかわからなかったが、勤務先の東洋電子と自宅、慎司が働いていたユニックスに連絡を入れた。 このとき、東洋電子ではスーパーコンピューター「TE2000」の開発が行われていた。この新製品の発表が遅れたり、開発中止を発表することになれば、会社が危機的状況になる。

羽嶋は慎司の部屋に行った。しかし、そこに残されていたものからは慎司のことをうまく想像できなかった。また、赤く染まった海岸の写真が気になった。

5時になったが慎司の意識はまだ戻らなかった。 羽嶋は集中治療室の前で、慎司がまるで彼の中に入りこもうとする得体のしれないもののように思えた。

11月28日

羽嶋は東洋電子の研究開発部に行った。そこではTE2000の組み立て作業が行われている。デバッグ作業は難航していた。 社長室で、大森と慎司についての話をした。

病院に、警視庁の刑事・名取と藤田がいた。名取は、慎司の血液から覚醒剤が検出された、彼の所持品にも覚醒剤があったと言った。 慎司を覚醒剤中毒者と決めつける刑事たちに、羽嶋は反感を抱く。

控室にいた奈津子は、精神的に追い詰められているように見えた。

羽嶋は、慎司のことを知るために彼のマンションに行くことにした。 その途中で、事故現場に立ち寄った。治安が悪そうなところで、慎司の部屋のイメージとは関係性がみつからないように思えた。

慎司の部屋で、羽嶋の論文が書かれている東洋電子社内報を開いた。その論文には何回も読み返した跡が残っていた。 そのとき、慎司の友人を名乗る理英子が入ってきた。彼女は慎司の部屋の鍵を預かっていた。

病院には3人の若者が見舞いに来ていた。その中の1人が、先週、慎司は電話で日本海に日の出を見に行くと言っていたと話した。 また、慎司が新宿に飲みに行くことはなかった、彼が酔ったところは見たことがない、とも言った。

羽嶋は、奈津子を送った後、事故現場に行った。そこにいたホームレスの老人と話をした。彼によると慎司は酔っていてまともに歩けない様子で、2人に両脇を支えられて道路の真ん中に出たという。

11月29日

病院に理英子が来ていた。喫茶店で理英子と話をしたが覚醒剤のことは話せなかった。 その後、社長室で、関東電力の社長・遠藤についての話になった。関東電力本社には東洋電子のスーパーコンピューターが納入されている。それだけでなく、この電力会社は東洋電子のパソコンをグループ全体で購入する予定があるらしい。 また、関東電力は新しい原発5基の建設を予定している。

名取刑事から電話がかかってきたので新宿署に行った。彼によると慎司を轢いた車が発見されたが、持ち主を特定する証拠はなかったという。犯人は犯罪に慣れた者ではないかと推測している。 藤田は、慎司が覚醒剤の売人だと疑っていた。羽嶋は、警察は憶測で市民を犯人扱いするのかと怒った。 名取がなだめて、藤田の過去について話した。

羽嶋は、慎司の部屋でフロッピー内のファイルを開こうとしたが、パスワードはわからなかった。 壁に貼られている赤い海岸の写真が目に留まった。 慎司の友人の「日本海に行って日の出を見る」という言葉を思い出したが、日本海で日の出は見れないことに気づく。 そこにあった地図帳で調べると、新潟県の日の出町という地名を見つけた。

羽嶋は、長谷川から軽自動車を借りて日の出町に行った。着いたのは夜だった。

11月30日

羽嶋は、『日の出町観光案内』を見た。そこには関東電力の日の出町原子力発電所の完成予定図が載っている。 彼は、数年前のこの町では、原発誘致に対して住民の大多数が反対派だったが、電力会社の説得によって住民投票の時に賛成派が勝ったという出来事を思い出した。

駅の近くを歩くと、市の建物はどれも真新しい雰囲気だった。 海岸線にそって車で走っていると、建設中の原発が見えた。 公園に車を止めて海岸線を見たが、慎司の写真とは似ていなかった。

町の食堂に行った。店主は、原発関係の人が増えたと言った。また、大きな声では言えないが、不審者も増えたこと、補助金が出て駅や役場や図書館が建ったこと、道路が舗装されたことなどを話した。 そのうえ、原発事故による放射能漏れを心配している様子だった。

そのとき店に来たのは環境保護活動をしている結城だった。彼は、電力会社が住民の反対意見を補償金や補助金で抑え込もうとしている、あの原発は利権の塊だと話した。

理英子の電話を聞いた羽嶋は東京に帰ることにした。 海岸線を走っていた時、ダンプがセンターラインを越えて車に衝突しそうになる。 羽嶋はとっさにアクセルを踏んだが、軽傷を負った。車は車体後部が変形したが、まだ走れる状態だった。 病院と修理工場に行ってから東京に戻る途中、北陸自動車道の手前で日本海に沈んでいく夕日を見た。その風景は慎司の写真によく似ていた。

帰宅できたのは午前3時だった。今日の事故のことを思い出した羽嶋は神経が過敏になっていく気がした。 羽嶋は、刑事たちの言葉や死体が漂着したニュース、建設中の原発、正面衝突しそうになったダンプのことを思い出してなかなか眠れなかった。

12月1日

雅恵と会社の近くのホテルのロビーで会う約束をした。慎司についての話をしたあと、彼女はパスワードを教えてくれた。

羽嶋は慎司の部屋でさっきのパスワードを入力した。ファイルに入っていたのは仕事の資料だった。 また、何も書かれていないメモ帳を持ち帰った。

東洋電子の第二研究開発室に行き、メモ用紙に残された筆跡を分析することを依頼した。 一方で、TE2000にはまだバグが3か所残っていた。しかし計算結果には問題がなかった。

羽嶋は、大森と関東電力ビルに行った。 遠藤は、今後も東洋電子のスーパーコンピューターを導入していく予定であり、原発建設の計画も進めていく予定だと話した。

羽嶋はユニックスに行った。 青山に会い、慎司の血液から覚醒剤が検出されたことを話し、何かの事件に巻き込まれたであろう慎司のことを知るために、彼がやっていた仕事について尋ねた。この行動が情報産業に関わる者として倫理に反していることはわかっていた。 青山は、過去に社内で覚醒剤事件があったことは話したが、それ以上のことは聞けなかった。 羽嶋が帰ろうとしたとき、青山は「ASME、Code、セクションⅢ」とは原発の構造設計基準であることを話した。

東洋電子に戻ると理英子がいた。うそをついて入館したらしい。 羽嶋が先日の交通事故について説明すると、彼女は、慎司について調べるのはもうやめたほうがいいと震えながら言った。 彼女は、慎司から預かった封筒を見せた。それは関東電装の経理報告書と300万円で、報告書は二重帳簿だった。慎司はこのファイルで300万円を手に入れたらしかった。 羽嶋は戸惑い、動悸が激しくなった。 そのとき、奈津子から、慎司が危篤という電話がかかってくる。

慎司が亡くなった。奈津子は絞り出すような声で羽嶋に慎司の仇をうってと言い、それから声をあげて泣いていた。 羽嶋の心の中には、生前に会うことがなかった慎司の姿が鮮明に刻み込まれていた。

12月2日

慎司の葬儀がおこなわれた。参列者の中には明美と裕子、大森もいた。 寺を出た後、青山がいた。慎司の人柄についての話のあと、彼は遺品の鳥の写真集を渡した。

名取がお時間をいただけないかと話しかけてくる。行き先は重度の薬物中毒やアルコール中毒患者専門の病棟だった。 そこにいたのは、吐き気をもよおすほど悲惨な様子の患者たちだった。 休憩所で名取は、日本海から密輸された覚醒剤がインターネットで取引されているのを捜査するため、羽嶋に協力するよう頼んだが、断った。 警察と別れたあと、羽嶋の脳裏に焼き付いていたのはさっきの患者たちと白く変色した慎司の顔だった。

自分の居場所を失ってしまったと感じた羽嶋は、慎司の部屋に行くことにした。 タクシーのなかで写真集を開くと、コンピューターのデータシートが挟まっていた。それは慎司が手がけた仕事のリストで、その中にはドーム球場の耐震計算や、関東電力の原発の原子炉内の流体シミュレーションが含まれていた。 慎司の部屋に行くと理英子も来ていた。羽嶋は経理報告書を破り捨てた。 二人でウィスキーを飲みながら会話をしたあと、いっしょに事故現場に行った。

理英子は先日のホームレスの老人を探し、慎司について聞いた。 なかなか話そうとしない彼をみた理英子は、カップ酒をいっしょに飲みながら話をした。 すると老人は事故について話し始めた。それは、慎司が、鳥の翼のように両手を広げて道路の真ん中に歩いて行ったこと、自殺のようなためらいがないように見えたことだった。また、慎司の両脇にいた2人はいつの間にかいなくなっていたこと。

羽嶋と理英子は喫茶店に行った。理英子は酔った様子だった。 理英子の父親がアルコール中毒だったことについての会話のあと、羽嶋は、慎司が覚醒剤を誰かに打たれて車道に突き出された、轢いた車を運転したのも覚醒剤を打った者の仲間だろうと推測を話した。 第二研究開発室から電話がかかってくる。その内容は、昨日のメモから読み取れたのは電話番号と名前だったこと。 それを見た理英子は新潟の番号だと言った。この番号は先日羽嶋が泊まったホテルと市外局番が同じだった。 つまり慎司も日の出町に行っていたとわかった。

慎司の部屋のファックスには、民宿「日の出荘」の宿泊予約の確認が入っていた。

12月3日

羽嶋は慎司のマンションの台所で寝落ちしていたことに気づいた。

新宿署に行き、これまで分かったことについて話をしたが、ホームレスに酒を飲ませて聞き出したという理由で信用してもらえなかった。

羽嶋は再び日の出町に向かった。 その前に、メモに書かれていた電話番号に電話すると、それは新潟工科大学の磯村研究室のものだった。 確認すると、その研究室は日本海の気象や海流、地質学の研究を行っていると分かった。

日の出荘に行った。主人に慎司について聞くと、彼は近くの山と海の写真を撮っていた、26日の午前中に急用で人に会う予定があると言っていたと話した。 窓から風景を見ると、そこは慎司の写真に写っていたのと同じ岬だった。

新潟工科大学の磯村研究室に行った。磯村教授に慎司の事故のことを説明すると、慎司が海岸の詳細な地形図を見せてほしいと頼んでいたことを話した。 堀田助教授によると、彼は、地殻構造、海流、気象などのデータの提供を受けた。それだけでなく、日本海の海流を計算するプログラムを作成したが、その目的は話さなかったという。

また、「ASME、Code、セクションⅢ」について聞いてみると、この研究室では、原発建設をする会社に地盤データを貸し出している。この研究室には原発そのものの詳細なデータがないので耐震計算はできない、と聞かされた。 また、この研究室は去年、この地域を横切る日の出断層の研究結果を発表したことを知った。

町の食堂で結城に会った。 羽嶋は、慎司が日の出原発についてなにか重大な情報を見つけたという推測を話した。 日の出荘に向かって歩いていた時、羽嶋は数人の男に暴力を振るわれた。

12月4日

東京に戻ると、慎司の部屋が荒らされていた。フロッピーディスクとパソコンも破壊されていた。 壊されたYS-11の模型とパソコンを見た羽嶋の心に悔しさがこみあげた。

会社の自室に行った。 長谷川によるとまだバグが1か所残っている。 羽嶋のパソコンには、慎司からのメールが届いていた。添付ファイルは竜崎湾の地盤についてなどの複雑なプログラムで、意味は分からなかったが慎司の情熱は伝わってきた。このメールが送信された日、慎司はすでに亡くなっている。

会社を出たが、車を運転する気力がなかった。止まった車(理英子も乗っている)に乗ったところ、行先は薄暗い倉庫だった。 そこにいたのは日の出町で羽嶋を襲った男たちだった。 そこでデータシートとフロッピーが燃やされた。 羽嶋は、理英子を解放するかわりにパソコン内のデータを削除することを要求され、指示に従った。 それで全てが終わってしまったように思えた。

品川で解放された羽嶋は慎司の部屋に行った。そこには理英子がいた。 羽嶋は、理英子が本当は慎司の恋人ではなく、関東電力に雇われただけだと言った。 理英子は、関東電力と関係があり、羽嶋の行動を報告するかわりに300万円を受け取ったことなどについて話した。 また、彼女は自分の過去についても話した。

羽嶋は、ウイスキーを飲んだあと、夢の中で慎司と会話した。 外に出ると雪が降っていた。自販機で買ったウイスキーを飲みながら夜道を歩き続けた。 彼は死んだ慎司のことを考え続けていた。 どこかのスナックでウィスキー数杯を飲んだ後、街に出た。 そこでぶつかった相手と喧嘩になった。道に倒れた羽嶋は何回も蹴られ、気絶する。

12月5日

羽嶋が目を覚ますと、そこは理英子のアパートだった。 彼女は羽嶋のあとをつけていて、彼が喧嘩で血だらけになるところを見ていた。それからアパートにつれてきて彼を看病していたようだ。 羽嶋は手足の関節の痛みと頭痛、全身のだるさを感じた。 彼は体力の限界を感じ、しばらく眠った。

起きると午前10時20分だった。トイレに行こうとしたが、体中が震えていて彼女の支えがないと歩けなかった。 理英子が作った雑炊を食べながら、慎司について話をした。 理英子は、慎司のためになにかできることはないかと聞いた。

研究開発部に頼んで会社の機材を慎司のマンション前に運んでもらい、理英子に受け取らせることにした。 羽嶋は痛みに耐えながら慎司の部屋に行った。

理英子を待つ間に、慎司のパソコンとハードディスクを分解した。 30分ほど損傷を調べていると、激しい頭痛、全身のだるさと熱を感じて横になった。 羽嶋は、壊れたコンピューターや慎司のメール、原発、彼を誘拐した男たち、理英子について考えていた。

理英子に起こされたが、意識はぼんやりしている。 羽嶋は、機材を運ぼうとしたが、彼女に止められたので2時間だけ寝た。 起きるとさっきよりも体が楽になっていた。 キッチンには、高性能なパソコンやプリンタ、フロッピー読み取り機などの大量の機材が運び込まれていた。

羽嶋は、特殊なフロッピー読み取り機で壊れた磁気ディスクをパソコンに読み込んだ。それには3時間かかった。 1時間以上かけて目視で読むと、3分の2以上のデータが破損していたが、慎司が亡くなった後に届いたメールはプログラムによって自動送信されたものだとわかった。 また、彼が原発関係の仕事をしているときに何か重大なことに気づいたのだと推測できた。そのことは関東電力にハッキングして知ったのだろう。印刷されたデータシートを見たが、それ以上のことはわからなかった。 羽嶋は思考停止しそうになった。 しかし、理英子の羽嶋さんにもできるはずという言葉を聞いた羽嶋は、関東電力のスーパーコンピューターにハッキングすることを決心した。

12月6日

7時になってわかったのは、日の出町原発に耐震設計上の欠陥があること。 日の出町には活断層があるが、それは従来考えられていたものの数倍の規模らしい。 関東電力は活断層のことを知っていたが、設計変更を避けるために計算式を改ざんしていること。 これらのことがもし公表されたら、工事は中止になるだろう。 この原発は地方の有力議員、国会議員、通産大臣が関係している。特に通産大臣は大きなダメージを受けることが予想される。 このような重大な情報を知ったために信司は殺されたのだろう。 このことを隠そうとしたのは、設計を変更すれば一千億近い建設費がかかるからだろう。 また、この原発だけでなく、稼働中の他の原発でも中止活動が起こることが予想される。稼働中止によって数千億の損失も出るだろう。 いつ起きるかわからないマグニチュード7以上の地震対策よりも、経済効率のほうを優先させたのだろう。 地震は起こらないだろうと言いかけた羽嶋は、地震によってメルトダウンが起きる状況を想像して恐怖を覚えた。

環境保護団体の入っている雑居ビルに行き、結城にデータシートとフロッピーを渡した。しかし結城はそれらを破壊した。 結城は羽嶋に銃を向け、世論操作のために環境保護活動をしていることと、ヤクザが慎司に覚醒剤を打ってから殺したことを明かした。 それを聞いた羽嶋は、「結城を雇っている者が、原発について調べている慎司のことに気づいたので、慎司に近づいた」「慎司が結城の正体に気づいたせいで殺された」という推測を話す。 結城が慎司のことをあざ笑ったので、羽嶋は今まで感じたことのないような怒りを感じた。 結城は羽嶋を撃とうとしたが、理英子のスタンガンで結城は倒れた。 理英子は、証拠品の拳銃を持って交番に行くことにした。羽嶋は結城が持っていたビニールの包みを渡し、名取と顧問弁護士の中村に助けを求めるように勧めた。それが彼女との別れだった。

羽嶋は東洋電子に戻った。 研究開発部ではTE2000のデバッグ作業が行われている。バグは「DAD」という文字を表示してから消えた。 社長室で、慎司のパソコンに残された複数のメールの送信先は大森だ、と大森に問いただす。 大森が話したのは、偶然羽嶋のファイルにアクセスしてしまい、ハッカーからのメッセージに気づいた。それから彼とメールのやりとりが始まった。彼は名乗らなかったが、電話番号を興信所に調べさせたところ、羽嶋の息子だと分かったこと。 続けて、ある日、慎司が関東電力の耐震偽装に気づいたことについて相談してきたと話す。 大森は、そのデータを利用して関東電力を脅迫した可能性があった。その行為は会社を守るためだった。 また、彼は、羽嶋に対する嫉妬心があった。それは羽嶋にエンジニアとしての才能と家族、周囲からの信頼があるからだという。 その時、開発部からの電話でTE2000の完成が伝えられた。

羽嶋は、関東電力ビルに向かった。アポなしで進藤に面会した彼は、原発のデータ改ざんと慎司の死について聞いた。 関東電力の研究員が不審死したことを話すと、進藤は無言だが動揺しているように見えた。 羽嶋が、そこにあったパソコンから関東電力の「原発についての極秘報告書」を開いて見せると、進藤は動揺した。 羽嶋は、慎司を思い浮かべながらそのファイルをインターネットにアップロードした。

街を歩いていた羽嶋は、何者かに脇腹を刺されてうずくまる。先日自分たちを誘拐した中にいた男が人混みに紛れていくのが見えた。 羽嶋は今にも倒れそうな体で明美と電話し、駅を目指した。

登場人物

羽嶋浩司
「東洋電子工業」副社長兼研究開発部部長。
松永慎司
「ユニックス」ソフト開発部副主任。羽嶋浩司と松永奈津子の息子。1973年12月1日生まれ。
松永奈津子
羽嶋浩司がかつて一緒に暮らした女。
羽嶋裕子
羽嶋浩司の妻。障害者のボランティアをしている。
羽嶋明美
羽嶋浩司と羽嶋裕子の娘。高校3年生。
大森良雄
「東洋電子工業」社長。羽嶋浩司と一緒に起業して、成功した経営者。妻や子どもなどの家族はいない。
長谷川
「東洋電子工業」研究開発部エンジニア。羽嶋浩司の部下。
相田
「東洋電子工業」第二研究室主任研究員。
中村
「東洋電子工業」顧問弁護士。
名取裕幸
警察官。
藤田
警察官。
青山俊夫
「ユニックス」ソフト開発部副主任。松永慎司の上司。
宮園理英子
松永慎司のガールフレンド。松永慎司とは仕事で知りあった。
富山
都立高校数学教師。松永慎司の大学時代からの友達。
木村
商社員。松永慎司の大学時代からの友達。
小池雅恵
建設会社コンピューターオペレーター。松永慎司の大学時代からの友達。
中西
「ユニックス」代表。
磯村
新潟工科大学教授。
堀田
新潟工科大学助教授。
笹山
日の出町の民宿の女主人。
結城
日の出原子力発電所建設反対の運動家。
山辺俊介
関東電力原子力事業部主任研究員。
進藤英治
関東電力会長。
辻堂真一郎
通産大臣。

既刊一覧

  • 単行本
    • 1999年発行、ISBN 978-4163185101
  • 文庫本〈文春文庫
    • 2002年発行、 ISBN 4-16-765627-2
    • 「イントゥルーダー 真夜中の侵入者」2022年1月4日発行、ISBN 978-4-16-791815-6

テレビドラマ

1999年12月4日テレビ朝日サントリーミステリースペシャル」でテレビドラマ化された。

キャスト

スタッフ

  • 原作:高嶋哲夫
  • 脚本:森下直
  • プロデューサー:霜田一寿、深沢義啓、岩田潤、森山浩一
  • 監督:小田切正明
  • 助監督:大草郁夫
  • 制作:ザ・ワークス、ABC
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